従業員が辞めない会社の新常識!?「中退共」を徹底解剖―国の助成と税制優遇をフル活用する秘策
- 西川 浩樹

- 3 日前
- 読了時間: 5分

中小企業の経営者のみなさま、優秀な人材の確保や定着に頭を悩ませていませんか?
「大手企業のような退職金制度は、うちのような規模では無理だ……」と諦めるのはまだ早いです。
今回は、中小企業のための「国の退職金制度」である中小企業退職金共済(通称:中退共)にスポットライトを当てます。他の企業年金制度や民間保険との比較を交えながら、なぜ今、中退共が選ばれるのか、その驚きのメリットと活用術を徹底解説します!
1. 中退共ってどんな制度?―「安心・確実・有利」の三拍子
中退共は、昭和34年に制定された「中小企業退職金共済法」に基づき、国が中小企業を支援するために設けた制度です。 単独で退職金制度を持つことが難しい中小企業が、相互扶助の精神で協力し、さらに国が援助をすることで、従業員の福祉と雇用の安定を図ることを目的としています。
現在、加入企業は約37万9千所、運用資産額は5兆5千億円を超える、非常に信頼性の高い巨大なシステムです(令和6年時点)。
最大の特長は、「外部積立型」であること。事業主が納める掛金は、独立行政法人勤労者退職金共済機構(機構)が管理・運用し、退職金は機構から直接、従業員の口座に振り込まれます。 つまり、会社が将来の支払いに備えて現金を社内にプールしておく必要がなく、確実に従業員の手元に退職金が届く仕組みなのです。
2. 他の制度と何が違う?徹底比較でわかる中退共の立ち位置
退職金や老後資金の準備には、中退共のほかにも「企業型確定拠出年金(DC)」、「確定給付企業年金(DB)」、「民間保険(養老保険など)」といった選択肢があります。それぞれの違いを見てみましょう。
比較項目 | 中退共 | 確定拠出年金 (企業型DC) | 確定給付企業年金 (DB) | 民間保険 (養老保険) |
運用リスク | 機構が負う(会社は負わない) | 従業員が負う | 会社が負う | 保険会社が負う |
経営者の加入 | 原則不可(※1) | 可能 | 可能 | 可能 |
税務上の扱い | 全額損金 | 全額損金 | 全額損金 | 半分損金 / 半分資産 |
国からの助成 | あり | なし | なし | なし |
投資教育 | 不要 | 必要 | 不要 | 不要 |
資金の流動性 | なし(従業員へ直接) | なし(60歳まで不可) | なし | あり(契約者貸付等) |
(※1)使用人兼務役員など、従業員としての実態があれば加入可能な場合もあります。
【ここがポイント!】
「企業型DC」との違い: DCは従業員自身が運用先を選び、その結果次第で受取額が変わります。会社には「投資教育」の義務が生じますが、中退共は運用の手間もリスクもありません。
「民間保険(養老保険)」との違い: 養老保険の「福利厚生プラン」は、満期保険金を会社が受け取るため、退職金だけでなく福利厚生や弔慰金の財源としても活用でき、契約者貸付などの流動性もありますが、保険料の半分しか損金に算入できません。 対して中退共は、全額が損金(個人事業主なら必要経費)として認められます。
3. 中退共だけのメリット
① 国が掛金の一部を肩代わり!「掛金助成制度」
これが中退共を選ぶ最大の理由と言っても過言ではありません。
新規加入助成: 初めて加入する場合、加入後4か月目から1年間、掛金月額の1/2(従業員1人につき上限5,000円)を国が助成してくれます。
月額変更助成: 掛金を増額する場合も、増額分の1/3を1年間助成してくれます(18,000円以下の掛金からの増額が対象)。
② 節税効果とコスト削減
掛金は全額非課税で損金算入できるため、法人税の節税につながります。 また、中退共は「給与」ではなく「退職金」の積み立てであるため、社会保険料の算定基礎に含まれません。 例えば、月額の給与を増やす代わりに中退共の掛金を拠出した場合、会社・従業員双方の社会保険料負担が軽減されるという隠れたメリットがあります。
③ 長期加入者に手厚い給付設計
中退共の退職金は、運用利回りを1%と想定した「基本退職金」に、運用の成果に応じた「付加退職金」が加算されます。 掛金納付が3年7か月を超えると、納付した掛金総額を上回る退職金が支給されるようになり、長く勤めるほど従業員にとって有利な設計になっています。
4. 従業員のモチベーションを最大化する「退職所得」の魔術
従業員に1,000万円を渡す際、それを「ボーナス(給与)」で渡すのと「退職金」で渡すのとでは、本人の手取り額に天と地ほどの差が出ます。
退職所得は、他の所得と分離して課税されるだけでなく、「退職所得控除」という非常に大きな控除があり、さらに課税対象額が1/2になるという、税制面での優遇を受けています。 例えば、20年勤続して6,000万円を受け取るシミュレーションでは、毎月給与に上乗せして受け取るより、退職時に一括で受け取る方が手取り額が約1,069万円も多くなるという結果もあります。 従業員に「この会社で長く働けば、これだけまとまった資金が残る」という安心感を与えることは、何よりの定着策となります。
5. 導入前に知っておきたい注意点
メリットだらけの中退共ですが、以下の点には留意が必要です。
役員は加入できない: 中退共はあくまで「従業員のため」の制度です。役員の退職金準備には、民間保険の養老保険や企業型DC、小規模企業共済などを組み合わせるのが賢い方法です。
原則、全員加入: 「特定の従業員だけ」という恣意的な運用はできず、普遍的な加入が求められます。
減額には同意が必要: 一度設定した掛金額を減らすには、従業員の同意や、継続が困難であるという国の認定が必要になります。
短期退職は損: 掛金納付が1年未満だと退職金は出ず、2年未満だと掛金総額を下回る「掛け捨て」状態になります。
中退共を「土台」にした福利厚生戦略を
中退共は、国の助成金を受けながら、ノーリスクで退職金の「土台」を築ける中小企業の強い味方です。
まずは中退共でベースの安心感を確保し、さらに「もっと手厚くしたい」「役員の資金も準備したい」という場合は、民間保険(養老保険)で資金の流動性を確保したり、企業型DCで従業員の資産形成を支援したりと、各制度の「いいとこ取り」を組み合わせるのが理想的な福利厚生戦略です。
「人材は宝」です。国のサポートを賢く使って、従業員が「ずっとここで働きたい」と思える環境を作っていきませんか?具体的なシミュレーションや規程の作成については、ぜひ専門家に相談してみてください。
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